食品の越境EC採点で米国満点・台湾9点、デミニミス廃止が逆風の中

食品輸出、越境ECで米国首位の採点-関税逆風と中国リスクの中

Published On: 2026-09-02|Last Updated: 2026-09-03|Categories: ニュース|By |

EC支援を行うネットショップスタジオは2日、日本の食品メーカーが海外で最初に狙うべき市場を独自採点したレポートを公開した。日本からの食品輸出額と各国のEC化率を軸に世界10の国・地域を評価し、米国が10点満点、台湾が9点で上位に立った。採点は独自の閾値と仮説に基づくもので、同社は市場を絞り込む初期の選別材料と位置づけている。

5項目で採点、ベトナム8点・香港と中国は4点

採点軸は輸出の規模、輸出の伸び、EC市場の規模、EC化率の伸びしろ、日本産食品の輸入規制の5項目である。米国が満点、台湾9点、ベトナム8点と続き、韓国7点、英国・タイ6点、香港・中国4点となった。

対象は米国・中国・韓国・台湾・香港・英国・ベトナム・タイ・マレーシアの9カ国・地域に、参考として日本を加えた10地域だ。同社は、食品ECの実額や1位モールのシェアは国ごとに統計の定義が異なり同一基準でそろえにくいとして、各国で定義がそろう農林水産省の国・地域別の食品輸出額を軸に据え、各国政府統計のEC化率を組み合わせたとしている。本レポートは楽天市場への出店企業を対象とした市場分析の第3弾。

EC化率の出典には経済産業省の調査に加え、米国センサス局や英国ONSなど各国政府統計を用いた。

輸出規模と伸びは一致せず、中国は水産物の急減が影を落とす

レポートによると、日本の食品輸出額は2025年に1兆5239億円(農産物と水産物の合計、林産物を除く)に達し、6年間で1.74倍、年率9.7%増となった。ただし規模の大きさと伸びは連動しない。米国は2674億円で年率14.2%増と規模・成長を両立する一方、輸出額2位の香港は年率1.4%増、4位の中国は同1.0%増と6年間ほぼ横ばいだった。

伸びが最も速いマレーシアは年率18.5%増だが、輸出額は288億円と米国の約1割にとどまる。中国の停滞は市場縮小を意味しない。農産物が885億円から1387億円へ伸びる一方、水産物が487億円から67億円へと6年で約86%縮小し、全体を打ち消した。この水産物の急減は、2023年8月の東京電力福島第1原子力発電所の処理水放出を受けた中国の輸入停止措置が主因とみられる。

同措置は2025年6月に一部が条件付きで再開されたものの、同年11月に再び事実上停止し、12月単月の対中輸出は前年割れに転じた。足元でも不安定な状況が続く。なお、林産物や少額貨物を含む2025年の農林水産物・食品の輸出額は農林水産省の集計で過去最高の1兆7005億円となり、米国が首位を維持した。

EC化率「27〜30%で頭打ち」仮説と市場の余地

もう1つの軸であるEC化率について、英国は2019年の19.2%から2021年に30.8%へ上昇した後、4年間ピークを超えられず、2025年は27.5%にとどまる。韓国も2025年に28.2%へ達したが、伸び幅は1.6ポイントから0.8ポイントへと半減した。

同社はこれを踏まえ、EC化率が27〜30%で天井を打つ可能性があるとの仮説を示し、機会は天井まで距離のある市場にあると分析する。米国の16.4%、台湾の13.9%はいずれも余地が大きく、日本の9.78%(2024年)も同じ側に入る。

ただし、EC化率の低さは、そのまま未開拓需要の大きさを意味するわけではない。オンライン購買習慣や配送・決済インフラの成熟度、統計上の対象範囲の違いが背景にある場合もあり、数値の単純比較には限界がある。

視点:満点の米国に迫る関税逆風、点数は「入口」にすぎない

今回のスコアは市場を絞り込む出発点として有用だが、越境ECの成否においては、輸出規模やEC化率だけでは決まらない。とりわけ、採点の根拠が2025年までのデータである点には注意が必要と言えよう。

首位の米国では、800ドル以下の小口貨物を免税としてきた少額貨物免除制度(デミニミス)が2025年8月29日に廃止され、日本からの小口発送にも関税と正規の通関手続きが生じるようになった。

関税負担と配送日数の増加は、採点上の高評価と足元の実務環境との間に無視できない差を生む。加えて、常温か冷凍か、賞味期限、現地語表示、国際送料を吸収できる価格帯といった商材ごとの条件も、実際に売り切れるかを左右する。

市場の点数は入口であり、次に問うべきは「誰が、何を、どの価格で、どの配送方法なら繰り返し買うのか」である。同じ市場でも、越境直販か現地在庫か、モールを起点にするかで採算と規制対応の主体は変わる。

市場選定は国の総合点だけでなく、商材特性と販売モデルを掛け合わせて絞り込む作業だといえる。あわせて、訪日客が現地で認知した日本食品を帰国後に再購入する導線として越境ECを設計すれば、ゼロから需要を起こすより購入理由をつくりやすい。訪日客の多い市場では、輸出額やEC化率に加え、訪日体験と再購入のしやすさも選定の評価軸になり得る。

この記事を書いた人

森 茂樹

元Web3ニュースメディア編集長。日本とオーストラリアで20年以上にわたり、記者・編集者、翻訳者、Webプロデューサーとして活動。日本ではエンターテインメント「ザテレビジョン」(KADOKAWA)ほか、豪州では「日豪プレス」の記者・編集者として従事した。

SNSで記事を共有