Cool Japan deficit

クールジャパン機構、累積赤字540億円で統廃合検討へ―越境ECの官民支援は転換点に

2026-07-27速報

経済産業省は官民ファンドの海外需要開拓支援機構(クールジャパン機構)について、統廃合に向けた検討会を7月中にも立ち上げる。2025年度の累積赤字が540億円に達し、目標を大幅に超過したためだ。他ファンドとの統合や廃止に加え、累積損失の要因と責任を議論し、年内をめどに方向性をまとめる。アニメ・漫画関連グッズを扱う越境EC事業者にとっては、官民連携の枠組みが変わる節目となりそうだ。

目標を114億円超過

同機構が6月24日に公表した2025年度決算によると、投資先の評価損などにより累積赤字は540億円に膨らんだ。経産省は財政制度等審議会の分科会に対し、25年度末の累積赤字を最大426億円に抑える目標を示していたが、114億円超過した。

赤沢亮正経済産業相は6月26日の記者会見で、経営管理の責任は一義的に経営陣が負うとしたうえで、経産省にも監督責任があるとの認識を示した。
機構は日本文化の海外展開を支援する目的で2013年に発足。政府出資は26年3月時点で1406億円に達し、出資金の約9割を国が占める。廃止となった場合、公的資金の回収可能性が問われることになる。

会計検査院の調査では、投資実行額に対する回収額の割合を示す回収率は24年3月末時点で60.0%。業績不振により26年3月に解散した農林漁業成長産業化支援機構(A-FIVE)の58.5%と同水準で、検査院が調べた19ファンドの中でも低位にとどまる。

総投資2040億円、コンテンツは30%

低迷の要因として指摘されるのが、投資対象の広がりだ。総投資額2040億円のうちメディア・コンテンツ分野は30%にとどまり、最多はライフスタイル・ファッション分野の36%。食やインバウンド観光など対象は多岐にわたった。赤字拡大の一因となったバイオ繊維開発のスパイバーもライフスタイル分野に分類され、同社は26年3月に私的整理に入っている。
コンテンツ産業に精通した人材を確保できず、金融出身者を中心とする体制で投資判断を行ったことが、対象の絞り込みを難しくしたとの見方が業界内にはある。

第1号出資は越境EC企業

越境EC業界との関わりは浅くない。機構が14年に最初の出資対象としたのは、アニメ・ゲーム関連商品を海外向けに販売するTokyo Otaku Modeで、3年間で15億円を投じた。経産省の資料では、正規品の流通拡大による海賊版・模倣品の駆逐効果も期待されていた。

一方、政府が6月に公表した戦略17分野の官民投資では、コンテンツ向けに33年度までに33兆7000億円を投じる方針が示された。対象はゲーム、アニメ、漫画、音楽、実写の5分野に絞られており、物販やEC流通は明示されていない。

経産省のコンテンツ産業支援策では国際的な流通網やファンダム形成への投資も対象に含まれるが、越境EC事業者がどの枠組みで支援を受けられるかは不透明だ。

制度環境の変化と重なる

統廃合の議論は、越境ECの事業環境が急速に変化する局面と重なる。米国は25年8月、800ドル以下の少額貨物に対する免税措置(デミニミス)を全世界を対象に撤廃。EUも26年7月から150ユーロ以下のを廃止し、少額貨物への定額関税を導入した。同月には米国で製品安全に関する電子申告も義務化されている。国内でも1万円の免税基準の見直しが検討課題に挙がる。

単価が低く個口直送が中心のグッズ販売は影響を受けやすく、現地在庫を持つ体制への移行が課題となる。通関実務や認証対応など、中小事業者が単独では対応しにくい領域への公的支援のあり方が、検討会の議論でも焦点となりそうだ。