
AI半導体がアジア航空貨物の新成長軸に―中国発の越境EC小口貨物は減速
人工知能(AI)関連インフラへの世界的な投資拡大が、アジアの航空貨物市場の成長構造を塗り替えつつある。半導体やサーバーといった高付加価値貨物が新たな需要の柱として台頭する一方、これまで航空貨物の成長を支えてきた中国発の低価格EC小口貨物(中国の越境EC)は、米欧の少額輸入品規制を受けて減速している。
AI関連貨物が航空貨物の新たな成長主軸に
航空・海上運賃分析を手がけるゼネタ(ノルウェー)は7月、公表した年央見通しを公表した。同資料を見れば、アジアの航空貨物市場で潮目が変わったことを鮮明にうかがい知ることができる。
同社のニール・ファンデワウ最高航空貨物責任者は「ECは航空貨物にとって最大の成長の柱だったが、もはやそうではない」と述べている。
AIインフラに関連する需要は、パンデミック後の小口貨物ブームとは性格が異なり、高性能メモリーチップやプロセッサーの複数年受注、データセンターへの数千億ドル規模の投資計画に裏打ちされ、構造的な性格を帯びる。ゼネタによると、4月の世界半導体売上高は前年同月比で2倍超となり、1986年の統計開始以来で最も高い伸びを記録した。半面、中国発の低価格品・EC輸出は5月に7%減少し、6カ月連続で前年を下回っている。

大韓航空、貨物収入46%増 半導体・サーバーが牽引
構造変化を象徴するのが大韓航空だ。同社の第2・四半期の貨物収入は前年同期比46%増の1兆5400億ウォン(約1750億円)に急増した。AIチップやサーバーラック、データセンターインフラが成長の主軸となり、中国からのEC貨物に代わる主要な成長要因となったという。
貨物事業を統括するウム・ジェドン執行副社長は「最先端のハイテク貨物が中核的な成長要因となっている」と説明する。広帯域メモリーチップやプロセッサーの受注は、需要が供給を上回る状況が続く中、すでに2〜3年先まで積み上がっているとされる。AI投資拡大に伴う半導体・サーバー需要に加え、韓国コスメの輸出好調も物流量の押し上げに寄与し、同社は25四半期連続の黒字を確保した。
AIサーバーや高性能半導体は衝撃や温湿度の変化に敏感な精密機器であり、恒温・除湿や精密な振動制御を備えた特殊輸送が求められる点も、航空貨物の付加価値を高めている。
デミニミス廃止とEU免税撤廃、中国発の越境EC小口貨物に逆風
需要地図を書き換えているのは、需要側の変化だけではない。制度面の変更が中国発の低価格EC貨物に逆風となっている。米国は昨年、少額貨物を無関税で輸入できる「デミニミス制度」を廃止した。欧州連合(EU)も7月1日、150ユーロ以下の輸入品に適用していた関税免除を撤廃し、商品1点当たり3ユーロの関税を導入。11月には2ユーロの取扱手数料も加わる見通しだ。
こうした規制強化は、近年の業界成長を支えてきた低価格EC貨物の勢いをそぐ要因となる。ファストファッションのシーインは7月26日、一連の制度変更が同社の米国事業に打撃を与え、欧州でもさらなる逆風になるとの見通しを示した。ANAホールディングスも声明で、半導体関連貨物は堅調に推移しているものの、EUの措置は貨物市場全体にとって下振れリスクだと指摘している。
太平洋横断路線が最強市場に、運賃は上昇基調
需要の偏在も進む。AI関連貨物は航空貨物全体の1割未満にとどまるものの、太平洋横断路線に集中しており、同路線を今年最も強い市場に押し上げている。運賃も上昇基調にある。ゼネタは2026年の長期契約運賃見通しを、従来の前年比5〜10%下落から5〜15%上昇へと大幅に上方修正した。
背景には、2月末の中東での紛争激化で航空貨物の輸送能力が急減し、需給が逼迫したことがある。下半期は輸送網の回復と需要の伸び鈍化で、需給は徐々に荷主側に有利な方向へ向かう可能性があるとされる。




