
越境ECの競争力、速さより「着地コスト」の透明化を重視 — 小売主導のラストマイル配送
国際物流大手のLandmark Globalが米国・カナダの消費者に実施した調査で、越境ECでの購入を阻む最大の要因が「隠れた関税・税金」であることが分かった。米EC専門メディアのEcommerce Timesが14日、報じた。北米の43%が予期せぬ関税・税金で購入を見送っており、配送の速さ以上に、購入後に追加で支払う総額と到着日時を事前に示せるかどうかが購入を左右し始めているという。
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小売がラストマイルの主導権を握る
決済大手Stripeの首席エコノミストErnie Tedeschi氏は「58ドルのタブレット用保護フィルムに、税関関連で45ドル払わされた。直接の関税だけでなく、輸出者が関税を負担しない場合にDHLが取る『duty tax processing』(17ドルまたは2%の高い方)が乗っている」と語っている。
こうした変化を受け、北米では小売事業者の物流戦略が転換しつつある。
最寄りの配送センターなどの最終拠点から、エンドユーザーの自宅や指定場所へ荷物を届けるまでの最後の区間の配送をラストマイル配送というが、この外部の配送会社に委ねてきたラストマイル配送を、データと技術で統制する動きが強まっている。
物流の最終区間であるラストマイル配送は、配送全体のなかでコストが高く、遅延、再配達、配送先ごとの事情、キャリアの供給力といった不確実性が集中する領域だ。配送能力のひっ迫、燃料費や人件費の上昇、繁忙期の追加料金などを背景に、単一の配送会社へ全面的に依存するリスクが高まっていることから、小売事業者がこの最終区間の主導権を握り始めたというのだ。
もっとも、重要なのは全工程を内製化することではない。自社の倉庫や車両と外部キャリアを別々の網として扱うのではなく、1つの配送網として管理し、地域、荷物サイズ、納期、コスト、通関条件に応じて注文ごとに配送手段を割り当てる「配送オーケストレーション」に主眼がある。人口の密集する都市部は自社便、特定地域は地域キャリア、広域は全国規模の事業者、といった使い分けを1つの仕組みで束ねる考え方だ。
自社便と外部キャリアを別々の配送手段として扱う場合に起きがちな、担当者ごとの判断のぶれや、荷物が外部に渡った後の状況の見えにくさを抑えられる利点がある。配送判断の自動化を担う技術が広がったことで、かつては大手にしか難しかったこうした運用が、中小の事業者にも現実的な選択肢となりつつある。
配送網を自ら制御するには、ソフトウエアやデータ、運用ノウハウへの先行投資が要るが、その効果は、膨大な注文で繰り返される割り当てや経路の判断を一つひとつ改善することで積み上げられる。
「着地コスト」の透明化が購入転換を左右する
越境ECの配送では、国内EC以上に購入者の不安要因が多い。国際送料に加え、関税、輸入税・付加価値税、通関手数料などが発生しうるためだ。商品価格にこれらを合算した購入者の最終的な負担額は、着地コスト(ランデッドコスト)と呼ばれる。
購入者が最も避けたいのは、注文後や商品受取時に予想外の費用を請求されることだ。商品ページで安く見えても、受取時に関税や税の支払いを求められれば、受取拒否や返品、次回以降の購入見送りにつながりかねない。
前述の調査では、隠れた関税・税金が越境ECの最大の障壁となったほか、予期せぬ配送料を懸念材料に挙げた消費者も32%に上った。一方、関税・税金をチェックアウト時に前払いできれば購入しやすいと答えた消費者は69%に達し、カナダで73%、米国で65%だった。
Landmark Globalは、海外ブランドへの関心と実際の購入との間に隔たりが生じており、隠れた費用や配送の不確実性、煩雑な返品が購入前の離脱を招いていると指摘する。総額の不透明さは、商品ページ上の価格競争力を打ち消すだけでなく、受取拒否や返品による損失にも波及しかねない。
関税・税金を含む総額を事前に確定して示すことは、配送の利便性にとどまらず、カゴ落ちを抑えて販売転換率を高める施策でもある。
米国とカナダで異なる不安、AIが注文単位で最適化
同じ北米でも、消費者が抱く不安は国によって異なる。Landmark Globalの調査では、カナダで「隠れコスト」を越境購入の障壁に挙げた消費者は59%に上った一方、米国では配送遅延を主要な懸念とした消費者が38%だった。
カナダは国土が広く、荷物の密度が低く、労務費や燃料費も高いため、費用を抑えた配送が難しい。ここに予期せぬ関税や手数料が重なると負担感が増すため、総額の事前提示が特に重要になる。対して米国では、大手プラットフォームが数日単位の国際配送を当たり前にした結果、速さへの期待はむしろ高まっている。
透明性の重要性は変わらないものの、より早く届く選択肢が選ばれやすい市場だと言える。配送の遅れを完全になくすことは難しいが、米国の買い物客の93%は、遅延が生じても事前に状況連絡をしてくれることで不満が一定程度和らぐと答えたという。
こうした差異を注文ごとに捌く手段として、AIを用いた配送管理が使われ始めている。
狙いは単なる送料の最小化ではない。コスト、納期、配送成功率、通関リスク、そして顧客に約束した内容を総合的に判断し、条件に応じて配送手段やサービス水準を選ぶことにある。高単価で都市部向け、週末前の注文であれば、多少送料が高くても短納期で追跡性の高い手段を選ぶ。
価格感度の高い商材なら、関税・税込みの総額を先に提示し、追加請求を避けられる配送を優先する、といった運用だ。ここで配送原価の最小化だけを指標に置くと、遅延や追跡不足、関税の追加徴収、受取拒否が生じ、かえって利益率とブランドへの信頼を損なう可能性がある。

日本の越境EC事業者に問われる設計力
北米向けに販売する日本の事業者にとって、物流はもはや発送後のオペレーションではなく、購入前から設計する販売体験の一部と言える。
論点は主に5つに整理できる。第一に、チェックアウト時に商品価格・送料・関税・輸入税・手数料を含む総額を明示することだ。受取時に追加の支払いが生じうる場合も、購入前に分かりやすく示すことが求められる。
第二に、関税・税金を販売者側で事前に処理するDDP(関税元払い)と、購入者が受取時に支払うDDU・DAPの使い分けである。商材や価格帯、現地の税制、物流パートナーの対応範囲を踏まえ、採算を見極めることになる。
第三に、配送予定日の精度。「通常○〜○日」という幅の広い案内にとどめず、発送処理から国際輸送、通関、最終配送までを踏まえた現実的な到着予定と、購入者が自ら確認できる追跡情報を示す。
第四に、複数キャリアの比較と切り替え体制である。価格だけでなく、地域別の配達品質、通関能力、補償、返品対応まで含めて評価すれば、繁忙期の料金上昇や一時的な配送障害の影響を抑えやすい。
第五に、配送データを販売指標として扱うことだ。国別のカゴ落ち(購入未完了)率、送料や関税を表示した後の転換率、配送遅延率、受取拒否率、返品率を追えば、商品価格や広告費だけでは見えない販売機会の損失を把握できる。
速さへの要求は続く一方で、今回の調査は、総額の明確さと配送の確実性を欠く取引が購入前に見送られやすいことを示している。

A recent study by Landmark Global reveals that unexpected customs fees and taxes are the primary barriers deterring North American consumers from cross-border e-commerce purchases. The report highlights that 43% of consumers have abandoned purchases due to hidden costs, emphasizing the need for transparency in total costs (landed costs) at checkout. It also notes that AI-driven delivery management is emerging as a solution to optimize shipping options based on customer needs, while Japanese cross-border e-commerce businesses are encouraged to enhance their logistics strategy by clearly communicating costs and delivery timelines.




