
産地証明を輸出の武器に―嬉野でDPP活用の実証、欧州の環境需要照準
電力トレーサビリティを手がけるUPDATERなど3社は7日、佐賀県嬉野市で地域産品のサステナビリティ情報を可視化し、欧州を中心とする海外市場への越境ECにつなげる実証プロジェクトを始動した。
欧州で導入が進むデジタルプロダクトパスポート(DPP)とトレーサビリティ技術を組み合わせ、「証明できる産地」としての付加価値を輸出競争力に変える狙いだ。
3社が連携、温泉旅館の敷地を実証フィールドに
老舗温泉旅館を運営する和多屋別荘(嬉野市)、地域創生やメディア事業を手がけるイノベーションパートナーズ(東京都)、再生可能エネルギー事業「みんな電力」を展開するUPDATER(東京都)の3社は同日、「嬉野・地域創生リジェネラティブプロジェクト」を始動した。
和多屋別荘が持つ約2万坪の敷地を実証フィールドとし、地域事業者や農家、行政、企業と連携して地域産品の付加価値向上と収益拡大を目指す。嬉野市では2050年までに人口が約37%減少すると見込まれ、第一次産業の担い手不足が課題となっている。
1300年超の歴史を持つ嬉野温泉、釜炒り製法のうれしの茶、磁器の肥前吉田焼といった地域資源を、海外需要と接続する構えだ。

欧州のDPP規制が越境ECの新たな前提に
背景には、環境配慮型の産品を評価する海外市場の拡大がある。調査会社モルドール・インテリジェンスによると、世界のオーガニック食品・飲料市場は2031年に約2,486億ドルへ成長すると予測される。
欧州連合(EU)では、製品の環境情報や供給網を電子的に記録するDPPの義務化が、持続可能な製品のためのエコデザイン規則(ESPR)に基づき段階的に進む。2027年2月にバッテリーで先行導入され、繊維や電子機器などへ順次拡大する見通しだ。食品は現時点で義務化対象ではないものの、生産・流通過程の環境情報を証明できることが、欧州向け輸出の付加価値や参入条件になりつつある。
こうした規制強化を輸出の障壁ではなく市場機会と捉える見方もある。
新興アグリテック企業のHARA AgriTechは5日、EU森林減少防止規則(EUDR)がパーム油やコーヒー、カカオ、ゴムに原産地の位置情報の提出を課している点を挙げ、トレーサビリティが「輸出の許可証になりつつある」と指摘。「原産地の証明がなければ、欧州市場への参入はできない」とし、規制対応そのものが「需要を生み出している」との認識を示した。
「脱炭素な茶葉」を輸出の武器に
2026年度は、茶畑での太陽光発電、産地情報の記録による越境展開、宿泊施設を使った体験型観光の3テーマで実証・検討に着手する。このうち越境ECの軸となるのが、2つ目の産地情報の記録だ。
お茶がどこの畑で、どれだけの環境負荷で作られ、どう運ばれたかといった情報を一つひとつデータとして残し、買い手がQRコードなどからその履歴をたどれるようにする。これが、欧州で導入が進むDPP(デジタルプロダクトパスポート)を活用した仕組みだ。「環境に配慮してつくられた本物の産地」であることを、証拠を示して伝えられる。
環境意識の高い欧州の消費者や企業にとって、こうした裏づけは商品を選ぶ決め手になりやすく、価格競争に巻き込まれにくい強みとなる。これを支えるのが1つ目の営農型太陽光発電(ソーラーシェアリング)で、茶畑の上に設置した太陽光パネルの電気で栽培することで、「再生可能エネルギーで育てた脱炭素な茶葉」という付加価値が生まれる。この事実もデータとして産地情報に加えられる。
売電収入は農家の収入安定にもつながる。3社は嬉野産品の欧州展開を足がかりに、産地の履歴を証明できるこの仕組みを他地域へも広げられる「持続可能な地域モデル」の確立を掲げる。







