
ベトナム進出を少額で―ホーチミンに常設の市場検証拠点
日本企業のベトナム進出で、現地法人を設けずに市場を試す手法が広がりつつある。
マーケティング支援のASA(広島)は1日、ホーチミン中心部に常設の消費者調査・試験販売拠点を開設した。大手小売や外食が相次ぎ進出する一方、中小の消費財ブランドには参入前の検証手段が乏しかった。低コストで反応を測る仕組みが、進出のすそ野を広げるかが問われる。
大手先行の陰で乏しい中小の市場検証手段
ベトナムは日本企業の有力な進出先として定着している。ジェトロが2025年8〜9月に実施した「2025年度 海外進出日系企業実態調査(アジア・オセアニア編)」によると、ベトナムに進出する日系企業の56.9%が今後1〜2年での事業拡大を見込み、ASEANで2年連続の首位となった。
小売ではイオンや高島屋、外食では吉野家や松屋など大手の出店も続く。高島屋は2016年にホーチミンのサイゴンセンターへ入居し、化粧品や食品を中心に上位中間層の需要を取り込んできた。
もっとも、こうした本格出店には相応の資本と時間を要する。現地法人の設立には資本金の払い込みやオフィスの保証金、登記・許認可を含め、初期費用で数百万円規模、準備に2〜3カ月程度が一般的とされる。
ジェトロの調査では、投資環境の課題として「行政手続きの煩雑さ」や「法制度の不透明な運用」を挙げる企業が多い。ブランド力や資金で劣る中小の消費財事業者には、進出の可否を見極める手前の検証手段が乏しいのが実情と言えよう。
常設型で消費者の反応を継続観察
ASAが開いた「YORU Creative House」は、この検証段階を担う拠点と位置づけられる。同社によれば、出展企業は月額20万円から、最短2週間で商品展示や試験販売を始められる。展示会や短期ポップアップと異なり、常設であるため消費者の反応を継続的に観察し、商品や価格を調整しながら再度試すことができるという。

拠点では、販売時点情報管理(POS)データの取得や来店客への聞き取りのほか、現地の一般消費者に近い立場で商品を紹介するKOC(キー・オピニオン・コンシューマー)を活用した販促、SNS広告の運用などを扱う。
対象は化粧品・食品・日用品・雑貨といったBtoC商材だ。日本食レストランがこの10年で倍増するなど、ベトナムでは日本の消費文化への関心が高い。訪日やアニメを通じた親近感も背景にあり、2026年に30周年を迎えるポケモンに象徴されるように、日本発コンテンツの浸透が消費財の販路を下支えする面もある。
「試す」から「売る」への接続が課題
もっとも、テスト販売で得た手応えを実際の事業拡大につなげられるかは、今後の課題として残る。ホーチミン市1区のサイゴンセンター周辺は、富裕層・中間層のベトナム人に加え日本人や欧米圏の在住者・旅行者が行き交う立地で、高島屋など先行組も同じ商圏で消費を取り込んできた。限られた来店客の反応が、より広い市場全体を代表するとは限らない点に留意が要る。
ASAは今後、成果が確認できたブランドを現地の流通・小売チャネルへ接続し、検証から本格販売までを一貫して支援する構想を示している。ただし、現地の流通網構築や許認可、輸入規制への対応は依然としてハードルが高い。低コストの市場検証が、実際の進出と定着にどこまで結び付くかは、出展企業の成果を待って検証される段階にある。







