
仏ウルトラファストファッション規制、SHEIN・Temu狙い撃ち=中国側は「保護主義」批判
フランスが衣料品などに環境拠出金の加算措置を課し始めて、2週間が過ぎた。狙いはSHEIN(シーイン)やTemu(テム)など中国系の超低価格ECにあり、中国政府は9月、差別的措置だとして即時停止を求めた。一方、判定基準の詳細はなお政令に委ねられ、欧州ブランドを事実上外した「骨抜き」との批判も残る。フランスへ販売する日本の越境EC事業者にとっては、線引きの不確実性と、新たに生じる義務への備えが当面の課題となる。
施行から2週間、狙いはSHEIN・テム 一般ブランドは対象外
フランス政府は9月1日、繊維製品を対象とする環境拠出金の加算措置の賦課を始めた。日本貿易振興機構(ジェトロ)によると、マチュー・ルフェーブル・エコロジー移行担当相が8月24日、繊維・靴・家庭用リネンのEPR制度の仕様書を定める省令を改正する省令に署名し、施行にこぎ着けた。
措置の中心は、既存のEPRに基づく環境拠出金を、商品の環境負荷に応じて増減させる「エコモデュレーション(加算・割増)」だ。靴下、シャツ、ジーンズ、コートといったカテゴリーごとに、ブランドの商品ラインの広さと、修理サービスの提供や修理情報の開示といった長期利用を促す取り組みの有無を組み合わせてスコアを算定し、スコアが一定を下回った製品に品目別の加算額が課される。
ジェトロによれば、制度は一般的なファストファッションと、シーインやテムといったEU域外のプラットフォームを区別できるよう設計された。ZaraやH&M、ユニクロなどは「クラシック・ファストファッション」と位置づけられ、現段階では最も重い規制の対象から外れている。
この動きは、SNS上でも多く議論されている。
南仏の起業家シルヴァン氏は、施行直後に「「Kiabi、Gemo、Zara、Celioなどは同じ国から輸入しているのに対象外。株主保護であり偽善だ」と批判した。
施行省令に基づく適用額は、2026〜27年が1点当たり0.5〜12ユーロ、2030年以降は2〜19.5ユーロへ段階的に引き上げられる。法律(LOI n°2026-602)は加算額の上限枠をより広く定め、2026年を0.25〜12ユーロ、2030年以降を2〜22ユーロとする。ただし生産者が理由を付して申請した場合、加算額または割増額は税抜き販売価格の50%を上限とする。法律が定める加算額の枠は年ごとに引き上げが予定され、2027年は0.5〜14ユーロ、2028年は0.75〜16ユーロ、2029年は1〜18ユーロとされている。
加算額が課された製品は、環境配慮設計に応じた割引(プレミアム)の対象からも外れる。生産者以外の販売者が売れ残り品を再流通させる行為は、適用の対象外だ。
背景には、フランスの繊維・衣料品産業が抱える競争環境の悪化がある。同産業の貿易赤字は120億ユーロを超え、2024年にフランスへ輸入された小包8億個のうち9割が中国からのもの。政府はEU域外からの少額貨物への課税なども打ち出しており、今回の加算措置も、低価格輸入への対応策の一環に位置づけられる。
捕捉の基準はなお政令待ち
施行から2週間が経っても、自社が加算額の対象になるかを最終的に判断できない事業者は少なくない。該当性は「新商品の参照品番数の多さ」と「修理を促す仕組みの乏しさ」の組み合わせで判定されるが、しきい値などの詳細はコンセイユ・デタ(国務院)の政令に委ねられており、ジェトロも判定の詳細は今後政令で定められると伝えている。
フランスの繊維業界団体「En Mode Climat」からは、評価手法の具体化を求める声が出ている。
同団体は、具体的な評価方法がなお明示されていないと指摘し、施行規則は2025年10月から運用される環境ラベルの評価手法に基づくべきだと主張する。判定の物差しが固まらないまま賦課だけが始まった格好で、事業者は自社の該当可否を確定できずにいる。
フランスの独立系報道機関Blastは繊維EPR仕様書案を、「生態・社会を軽視し民間に寄せている」とESS側の批判していた。
対象範囲を巡る不確実性は、繊維に限らない。フランスは業務用包装材のEPRでも、認定団体による拠出金体系の公表が遅れ、多くの事業者が加入義務の有無を判断できない状況を理由に、本格運用の開始を2027年1月へ延期した。
政府は9月中の不確実性の解消を掲げたが、EPRの「誰が義務を負うのか」という線引きが制度の初動でつまずく構図は、他分野でも繰り返されている。日本の事業者にとっても、加算額の対象か否かの見極めには、政令の公表を待つ局面が続く。
日本の直販事業者に及ぶ既存EPRと現地代理人の義務
加算額の対象は狭い一方で、繊維のEPRそのものは、はるかに広い範囲に及ぶ既存の枠組みだ。フランスの繊維・靴EPRを担う認定団体(エコ・オーガニズム)であるRefashionは、衣料品・家庭用リネン・靴が同国内で最終消費者に提供された時点で、ブランド、流通業者、製造業者、輸入者、オンライン販売者、マーケットプレイスのいずれもがEPRの対象となり、同団体への登録義務を負うと説明する。
これは2020年の循環経済法(通称AGEC法)を土台とし、製品を市場に出した者が使用後の段階まで責任を負う「汚染者負担」の原則に立つ、従来からの義務と定められている。繊維分野では、事業者はRefashionへの登録を行ったうえで、市場投入量の申告と環境拠出金の支払いを基本的な実務として担う。今回の加算措置は、この既存の枠組みに上乗せされる形で機能する。
今回の法律は、この枠組みに一つの重い義務を加えた。フランスに拠点を置かずにEPR義務を負う者に対し、フランス国内に拠点を持つ自然人または法人を、書面による委任で「認定代理人」として選任するよう義務づけた。代理人は委任を受けたEPR上の義務を代位して履行する。
この義務は、加算額の対象か否かにかかわらず、繊維EPRの義務者一般におよぶ。
したがって、日本からフランスの消費者へ直接販売する事業者がまず確認すべきは、「加算額の対象か」よりも先に、「そもそも繊維EPRの義務者に当たり、代理人の選任が要るのか」という点になる。代理人の選定・契約、販売数量やブランド・SKUデータの連携、申告・監査への対応といった固定的な負担は、売上規模が小さい事業者ほど相対的に重くなりやすい。

マーケットプレイス評価と製造地表示・広告規制
規制は、自社ブランドを販売する事業者にとどまらない。マーケットプレイス、プラットフォーム、ポータルなどのオンライン・インターフェースを通じて遠隔販売や配送を仲介する者についても、扱う新品の参照品番全体を基に、ウルトラエクスプレスファッションに該当するかを評価する枠組みが設けられた。一定の場合には、出店ブランドの所有者が「生産者」であり、当該インターフェースがそのブランドの主たる販売チャネルではないことを示す証拠を、行政当局へ提出できるよう保持しておく必要がある。
ただし、このオンライン・インターフェース向けの規律は、EU域内の他の加盟国や欧州経済領域(EEA)に拠点を置く者には原則適用されない。該当する運営者には、節度ある消費、再使用、修理、リサイクルを促すメッセージや、製品の社会的影響、環境・健康への影響、配送サービスの環境影響に関する情報を、明確で読みやすい形で表示することも求められる。
さらに、認定を受けたエコ・オーガニズムが、オンライン上で公開される情報を自動で収集する仕組みを導入できる規定も盛り込まれた。ECサイト上の商品数、価格、製造地、修理情報の表示は、当局による照合の対象になり得る。
表示に関する義務は、対象製品に広く及ぶ。オンラインで販売する対象製品については、製造地を、価格と同じ大きさの文字で、価格の近くに明確かつ読みやすく消費者へ示さなければならない。フランスでは繊維・靴・家庭用リネンを対象に、分別を促す情報表示や「Triman」マークが2023年2月以降義務づけられており、新法の製造地表示と既存の表示義務を一体で管理することが実務上の課題となる。
一方、広告・宣伝への規制は狙いを絞る。2027年1月1日から、ウルトラエクスプレスファッションに該当する製品や、その慣行を用いるブランドを直接・間接に宣伝する広告が禁止され、販促の手段として「無料」の語を用いることも認められなくなる。
SNSなど電子的手段による商業的インフルエンス活動を通じた宣伝も対象となり、違反には最大10万ユーロの行政罰金が科され得る。
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「環境対策か保護主義か」 ウルトラファストファッション規制への批判
施行に至るまで、この規制には賛否両論が寄せられてきた。批判は方向の異なる二つに大別できる。
一つは、産業界からの実効性への疑問だ。仏小売業のアライアンス・デュ・コマース、EC事業者団体のFevad、商業流通連盟の3団体は、法の趣旨には賛同しつつ、最終条文はまずフランス国内企業に影響が及び、主たる標的である中国系の大手プラットフォームには効果が及ぶのが遅れる、あるいは同じ条件では課されない恐れがあると警告した。品番数を基準とする定義が当初想定より狭く、事業慣行を調整すれば回避できる「抜け穴」になりかねないとの指摘である。
もう一つは、環境団体からの後退批判だ。約30の団体・NGOで構成する「ストップ・ファストファッション」連合は、対象がウルトラファストファッションに狭く限定され、当初対象だった他の大手アパレルを除外していると反発した。ZaraやH&Mなど欧州系ブランドが実質的に外れたことには、環境保護の観点からの批判もある。「環境対策」を掲げながら、欧州産業の保護と受け取られかねない構図である。
対外的な摩擦も生じている。中国商務省の報道官は9月1日、同法を「環境保護を装った差別的な措置だ」として、即時の施行停止を求め、世界貿易機関(WTO)の無差別原則に反する疑いがあると主張した。
同省は、措置が中国企業だけでなくフランスの消費者にも不利益をもたらすとも述べた。欧州では既に、欧州委員会がアリエクスプレスにデジタルサービス法(DSA)違反で5億5000万ユーロの制裁金を科すなど、中国系プラットフォームへの圧力が強まっている。
一方、法案の報告者を務めたアンヌ=セシル・ヴィオランド議員は、迅速に成立し直ちに施行できる法律が必要だったとし、シーインに対する厳しい第一歩だと意義を強調した。フランス政府も、主たる対象はシーインやテムであり、一般的なブランドには影響しないとの立場を示している。
評価軸そのものが割れるなか、制度が実際にどの事業者へ、どの程度効くのかは、政令の詰めと今後の運用に左右される。
低価格・多品目モデルに残るウルトラファストファッション規制の宿題
規制の重い部分が現実に効いてくるのは、大量の新商品を短サイクルで投入し、修理を促さないまま低価格で売り切るモデルの事業者だ。日本発の越境ECでも、色・サイズ違いを含めてSKUを大量展開し、フランスの消費者へ直接届ける販売形態は、加算額と2027年からの広告規制の双方で影響を受け得る。このモデルに近い事業者ほど、政令が固まった段階で該当性が問われる可能性が高い。
もっとも、施行から間もない現時点では、この規制がSHEINやTemuの販売に与えた影響を示すデータはない。フランスではTemuとAliExpressの利用者が2026年第2四半期に大きく減ったが、これは少額貨物への課税が導入される前の動きで、主たる標的であるSHEINは横ばいだった(Fevad/Médiamétrie)。
欧州で両社に現実に効いているのは、7月に発効したEUの少額貨物への課徴金(150ユーロ未満の輸入品への課税)で、両社は同時期に欧州の検索連動型広告への出稿を大幅に絞っている。規制そのものの効果が販売データに表れるのは、これからになる。
フランスの制度は、環境負荷の高いファッションを抑制する国内政策であると同時に、域外から低価格商品を大量に送り込む販売モデルを意識した措置でもある。法律は政府に対し、公布から6か月以内に、EU域外で製造された繊維製品への炭素国境調整措置(CBAM)の拡張の妥当性を検討する報告書を議会へ提出するよう求めた。1年以内には、EU域内市場の国境で健康・社会・環境の基準を輸入品に課す「ミラー措置」についても検討し、製品がEUへ入る時点で欧州基準に適合して生産されたことを輸出者が立証する、立証責任の転換の是非も分析する。
現時点では、日本製の繊維製品に新たな国境負担が決まったわけではないが、EU域外からの輸入品に対し、環境・人権・製品寿命に関する説明責任を強める方向は明確だ。集められた拠出金の一部は、フランス国内での回収・分別・再使用・リサイクルの基盤整備に充てられ、対象製品から生じる廃棄物は、認定団体などと契約した事業者でなければ扱えないと定められた。低価格・多品目・短サイクルで海外の消費者へ直接届けるモデルは、欧州では「安さ」だけで成立しにくくなりつつある。

France has implemented an environmental contribution fee on textile products, targeting low-cost e-commerce platforms like SHEIN and Temu. This regulation, effective from September 1, aims to reduce the environmental impact of fast fashion but has faced criticism for potentially excluding European brands. As companies await clarification on the criteria for these fees, Japanese cross-border e-commerce businesses grapple with compliance challenges. The law underscores the growing tension between environmental policy and trade relations, particularly concerning Chinese imports.




