
海外売上が伸びても利益が残らない理由|Shopifyから考える越境ECの着地コスト管理
Shopifyは2026年9月23日、Analyticsの収益性データを更新し、同一注文で発生する関税とその他の配送費を併せて反映できるようにしました。多通貨注文への対応も改善され、「市場別の平均利益率」や「注文別利益率」などの数値が変わる可能性があります。越境ECでは、海外で売れたかどうかだけでは事業の成否を判断できません。国際送料、関税・輸入税、為替、返品、値引きを含めると、売上が大きい市場ほど利益を圧迫しているケースもあります。
今回の更新を機に、日本の越境EC事業者は「どの国で売れているか」から「どの国で利益が残っているか」へ、分析の軸を移す必要があります。そこで、今回は海外売上はあるのに利益実感が薄いと感じている経営者・事業責任者、そして複数国への配送・関税対応の実務を担っている越境EC担当者向けに、Shopifyの収益性データのアップデートから、関税・配送費・為替を市場別の利益にどう反映させ、国別利益率を改善していくかについて解説します。
目次
Shopifyの更新は何を変えたのか
Shopifyは今回、Analyticsの収益性データについて、同一注文で関税とそれ以外の配送コストが発生した場合に両方を反映できるように改善したと発表しました。多通貨注文への対応も強化され、「Average profit margin by market」をはじめとする既存・カスタムのレポート数値が、更新前後で変わる可能性があります。
これは単にダッシュボードの数字が精密になるという話ではありません。越境ECでは、同じ商品を同じ販売価格で売っても、販売先によって国際送料、関税・輸入税の負担者、為替変動、返品・再配送コストなどが異なります。Shopifyの利益レポートは、市場別の商品売上や顧客請求額だけでなく、店舗側が負担した商品原価・送料・関税も扱う仕組みになっており、国内市場と国際市場の収益性を比較する材料として位置付けられています。
つまり今回の更新は、越境ECにおける「売上の伸び」と「儲かる国・赤字になりやすい国」を切り分けるための前提データを改善するものです。関連する物流・関税の実務については、海外販売の物流ガイドや米国宛貨物の関税事前支払い義務化の記事もあわせてご確認ください。
越境ECで利益率が見えにくくなる4つの理由
国内ECの感覚のまま海外展開を進めると、利益率は見えにくくなります。主な理由は次の4つです。
第1に、商品原価だけでなく国際送料、フルフィルメント費、梱包費が上乗せされます。国内配送とは原価構造そのものが異なります。
第2に、関税・輸入税の負担者と回収方法が、市場や配送条件によって変わります。購入者が負担するのか、事業者が立て替えるのかによって、キャッシュフローも利益の見え方も変わってきます。
第3に、現地通貨での値付けと、円建てのコスト・入金額の間には為替変動があります。表示価格を固定しても、実際に手元に残る利益は為替次第で増減します。
第4に、返品、受取拒否、通関トラブル、再配送のコストが国別に発生します。これらは注文の一部にしか現れないため、平均値だけを見ていると見落としやすいものです。

ここで重要なのは、「国内ECの粗利率」と「越境ECに必要な市場別の貢献利益」を区別することです。粗利率は商品単位の話ですが、貢献利益は配送・関税・為替・返品まで含めた市場単位の話になります。この違いを意識しないまま海外売上を追いかけると、売れているのに儲からないという状況に陥りやすくなります。
Shopifyの改善から読み解く、見るべき4つの数字
Shopifyの標準レポートを例に、自社のカートやBIツール、スプレッドシートでも再現できる指標として整理すると、以下の4つに集約されます。
①売上高:市場規模や需要を測る数字ではありますが、採算を保証するものではありません。
②顧客負担の送料・関税:これは購入者にとっての価格透明性を測る数字であり、着地コストの透明化を重視する購買体験づくりに直結します。
③自社負担の送料・関税:ここが市場別の利益を左右する最も重要な数字です。
④注文別・市場別の利益率:商品原価、配送、関税、値引き、返品などを統合して初めて判断できる数字になります。

Shopifyでは、顧客が支払う配送費と店舗が負担する配送費、顧客の関税・輸入税と店舗側の関税・輸入税を区別する指標が提供されています。自社のレポートでも同じ考え方で費用を区分できているか、一度点検してみる価値があります。
国別利益率を改善する5つの施策
数字の見える化ができたら、次は改善に移す段階です。実務の中心として、以下の5つの施策を挙げます。
①商品情報の整備
HSコード、原産国、重量、寸法、材質、用途をSKU単位で管理することが、関税見積もりや配送見積もり、輸出書類の精度を左右します。ECサイト構築システム比較を検討する際にも、こうした商品マスタの拡張性は確認しておきたいポイントです。
②配送原価を注文単位で取り込む
配送会社の請求、フルフィルメント費、燃油・遠隔地・通関関連の追加費用を、可能な範囲で注文番号や配送番号に紐づけます。平均送料だけを見ていると、重量や配送地域、配送サービスによる赤字を見落としがちです。
③DDP・DDUを市場別に設計する
すべての国で同じ配送・関税負担方式に固定するのではなく、高単価商品、関税水準、競合価格、返品リスク、購入者の期待を踏まえて、市場ごとに最適な条件を決めていく必要があります。
④現地通貨価格を固定価格として点検する
為替が変動しても、現地通貨で固定した販売価格は自動的に利益を守ってくれるわけではありません。価格改定の基準、許容利益率、再計算の頻度をあらかじめ定めておくことが重要です。
⑤広告投資を売上ではなく限界利益で判断する
ROASが高くても、関税・送料・決済コストを含めた後の利益が薄ければ、広告を拡大するほど損失も広がります。市場別に「広告費を投下できる上限」を設計しておくべきです。

既存データをどう見直すべきか
Shopify利用企業であれば、今回の更新を機に以下の手順で点検を行うことをおすすめします。
まずAnalyticsで市場別・注文別の利益レポートを確認します。次に、更新前に保存していたレポートやエクスポートと比較します。そのうえで、送料、関税・輸入税、利益額・利益率の差が大きい市場を抽出し、該当市場の注文を数件単位で確認して、配送費・関税・値引き・通貨換算のどの要因が影響したのかを切り分けます。最後に、価格、送料無料条件、関税込み設定、広告予算、配送方法を再設計します。
ただし、Shopifyの利益レポートを唯一の損益計算書として扱うべきではありません。広告費、外部3PL費、決済サービス費、返品費、バックオフィス費なども別途突合する必要があります。EUの越境EC規制・対応まとめのように、地域ごとの規制コストも見落とせない要素です。
まとめ:判断軸を「売上」から「再現性ある利益」へ
Shopifyの今回の更新は、越境ECの分析精度を高める前向きな変化です。しかし、ツールの数字を眺めるだけでは利益改善にはつながりません。商品マスタ、配送原価、関税負担、現地通貨価格、広告費を1つの市場別収益モデルに接続する必要があります。
これから海外展開する企業は、出店や集客に着手する前に「国別の採算表」をつくっておくべきです。売上高ではなく、着地コストを差し引いた後に残る利益こそが、持続可能な越境ECを支える判断軸になります。越境ECのトレンド総まとめや既存ECサイトに導入できる越境EC支援サービスの記事も合わせて、収益管理の体制づくりにお役立てください。
On September 23, 2026, Shopify updated its analytics to better reflect profitability by incorporating customs duties and additional shipping costs for the same order. This enhancement allows cross-border e-commerce businesses to shift their focus from just sales to profitability by market. Key reasons why profit margins can be obscured in international sales include additional shipping costs, variations in customs duties, currency fluctuations, and costs from returns. To improve profit margins, companies are advised to maintain detailed product information, link shipping costs to individual orders, and analyze market-specific pricing strategies. The update encourages businesses to create a profitability model that includes all costs, steering their approach from sales figures to sustainable profit management.




