
豪州越境ECに拡大の兆し―Amazonがドローン配送検討、アジア発の貨物便も増強
海外の現地報道各社によれば、米Amazonが豪州でドローン配送の導入を視野に、規制認可の責任者の採用に動いている。また、アジアと豪州を結ぶEC貨物便の増強も相次ぐ。高所得で越境購入に積極的な豪州市場で物流と最終配送への投資が進み、アジア発のオーストラリア越境ECが拡大する環境が整いつつある。
Amazonが豪州でドローン配送を検討
米EC大手Amazonの配送サービス「Prime Air」が、豪州でのドローン配送に向けて動き出した。英IT誌The Registerが9月28日、同社の求人をもとに報じた。募集しているのは「豪州の規制認可責任者」で、航空規制の承認取得と、豪州の顧客へのドローン配送の実現が職務目標に掲げられている。上司にあたる役職は「アジア太平洋のPrime Air拡大責任者」だ。
正式な開始時期や対象地域の発表ではなく、Amazonは同誌の取材に応じていない。ただ、求人の文言からは、市場評価の段階を超えて豪州での運用を見据える姿勢がうかがえる。同社は2026年、米国内の500近い都市・町でドローン配送を展開する計画も示しており、その延長線上に豪州がある。
アジア発の貨物便が相次ぎ増強
最終配送だけでなく、国際輸送のキャパシティも広がりつつある。航空貨物業界では、香港エア・カーゴが香港とブリスベンを結ぶ往復のチャーター便を月内に始める計画が伝えられた。EC貨物の需要が航空輸送を下支えする構図で、中国・香港などアジアの供給地と豪州東部を結ぶ輸送力の増強にあたる。
メルボルンのアバロン空港と物流事業者テレポートは9月、アジアの輸出市場から豪州へ向かうEC貨物を主眼とした新たなゲートウェイを設けると提携も報じられた。アジア発の小口貨物を効率よく運ぶ経路づくりが進んでいる。
越境購入に積極的な市場、日本には制度の追い風
こうした投資の背景には、豪州市場の底堅さがある。豪州は人口の98%が銀行口座を保有し、その割合はアジア太平洋(APAC)地域で最も高い。インターネット普及率も高く、国際物流大手DHLの2026年の調査では、豪州のオンライン購入者の74%が海外の小売業者から購入し、うち3割超が月1回以上利用している。民間調査では、豪州の越境輸入EC市場は2025年時点で約140億ドル規模とされ、年率約7.6%で拡大するとの見方がある。

制度面も比較的開かれている。関税は原則として1000豪ドル以下の輸入貨物で免除され、少額品を含む輸入に10%の物品サービス税(GST)が課されるが、徴収の枠組みはすでに定着している。米国やEUが少額免税の撤廃や新たな手数料で負担を増すなか、豪州の制度は予見しやすい。日本からの輸出には日豪経済連携協定(JAEPA)の特恵税率も適用され、他の供給国に対する強みとなる。
越境ECにおける日豪EPA(JAEPA)3つの特長
- 関税の優遇:JAEPA(2015年1月15日発効)は発効後10年で両国貿易額の約95%相当の関税撤廃を予定し、豪州側は全農林水産品・多くの工業品が即時撤廃。日本原産品が要件を満たせば、同一品目で協定優遇のない国・地域からの輸入品より価格競争力を持ち得る(実税率はHSコードごとに要確認)。
- 特恵の条件:適用には協定の原産地規則を満たす「日本原産品」であることが必要で(=「日本製」や「日本発送」と同義ではない)、特定原産地証明書または原産品申告書を用意し、部品表・製造工程・原価計算などで原産性を立証・保存する実務が要る。
- 効きどころ:A$1,000以下(酒・たばこ除く)は輸入関税が原則免除のため、JAEPAの関税メリットは主にA$1,000超で現れる。ただし、A$1,000以下でも越境ECの低額輸入品には10%のGSTが販売時に課されることには留意する。

豪州越境ECの競争は配送体験へ
市場の拡大は、競争の質も変えるだろう。
最終配送や航空輸送への投資が進めば、豪州の消費者が求める到着の速さ、追跡の精度、返品のしやすさといった配送体験の水準は上がっていく。価格や品ぞろえだけでなく、こうした体験をどう設計するかが、選ばれる条件になる。
日本の事業者にとって、豪州は制度が予見しやすく、JAEPAの後押しもある有望な市場である。拡大する需要を取り込めるかは、価格に加えて、到着日数や関税込みの総額表示、追跡、返品への対応をどう整えるかにかかる。アジア発の越境ECの次の主戦場として、豪州の存在感は今後増していくと見られる。
Amazon is moving to implement drone delivery services in Australia, as evidenced by job listings for regulatory approval roles specifically targeting this market. Concurrently, enhancements to air cargo routes linking Asia and Australia are underway, reflecting growing demand for cross-border e-commerce. With strong purchasing power and a high online shopping rate, Australia’s e-commerce market is expected to expand significantly, presenting opportunities for international retailers, including Japanese businesses.




