
健康食品の効能表現はECでどこまで書ける? 消費者庁126商品指導に学ぶ美容訴求の線引き
消費者庁は4日、2026年4〜6月のインターネット監視で、健康食品などを販売する117事業者・126商品の表示に、健康増進法が禁じる虚偽・誇大表示のおそれがあったとして改善指導を行った。対象はダイエットや美白などの効能を標ぼうする商品が中心で、監視は検索エンジン経由で商品ページを直接確認する手法だった。ここでは、越境ECで健康食品や美容関連商材を扱う事業者にとって、商品ページ・広告・SEO記事・翻訳コピーの表現をどこまで書けるかについて解説する。
監視は検索エンジン経由、商品ページを目視
今回の監視は、一般的な検索エンジンでキーワード検索を行い、表示された商品のサイトを目視で確認する方法で実施された。対象は有料広告に限らない。検索でヒットする商品ページやランディングページ、集客用のSEO記事も、そのまま監視の範疇となった。事業者がショッピングモールに出店している場合は、モール運営事業者にも指導した旨が通知され、表示の適正化への協力が求められた。出店者側の表現が、運営者経由での修正・削除対応につながりうる構図と言える。
指導件数は前四半期(2026年1〜3月)の156事業者・176商品から減少したが、令和7年度は年間で589事業者・641商品が対象となっており、監視は四半期ごとに続いている。件数の増減にかかわらず、検索で露出するページが継続的に点検されている状況は変わらない。
「健康食品の効能表現」で線引きを決める3つの法律
さて、「どこまで書けるか」は、主に3つの法律の組み合わせで決まる。
第一に薬機法(医薬品医療機器等法)である。疾病の治療・予防や、身体の組織機能の増強を目的とする「医薬品的な効果効能」を標ぼうすると、その食品は医薬品とみなされ、承認を受けない限り、誇大かどうかを問わず、そもそも表示できない。「糖尿病予防」「高血圧を防ぐ」といった表現がこれに当たる。
第二に健康増進法第65条第1項である。食品の健康保持増進効果等について、著しく事実に相違し、または著しく人を誤認させる誇大表示を禁じている。ここでいう「健康保持増進効果等」には、疾病の治療・予防を目的とする効果や身体機能の増強に加え、栄養成分の効果、そして人の身体の美化に資する効果、つまり美容訴求も含まれる。暗示的・間接的な表現も対象になると、消費者庁の留意事項は整理している。
第三に景品表示法である。効果を裏づける合理的根拠がないまま優良性を示せば、優良誤認表示(不実証広告)に問われうる。利用者の体験談やモニターの声を根拠として示す場合も、統計的な客観性が確保されていなければ足りない。

さらに、書ける範囲の限界は製品区分によって変わる。いわゆる健康食品(保健機能食品以外)は、効果効能をほぼ標ぼうできない。機能性表示食品は届け出た機能性の範囲でのみ表示でき、疾病の予防・治療や、美白・増毛など健康の維持・増進の範囲を超える表現は認められないと、消費者庁の事後チェック指針は明記する。特定保健用食品(トクホ)は、許可を受けた保健の用途の範囲で表示できる。自社商品がどの区分かを確認しないまま表現だけを整えても、線引きは判断できない。
指摘されやすい効能表現と書き換えの方向性
今回の指導で標ぼうされていた効果には、ダイエット、脂肪燃焼、糖尿病・高血圧予防、花粉症対策、妊活、免疫力向上、デトックス、血液サラサラ、美肌・美白、肌のシワ・たるみケア、紫外線対策などが並んだ。類型ごとに、なぜ問題になりやすいかと、書き換えの方向を整理すると次のようになる。
| 指摘されやすい表現 | 抵触しうる考え方 | 書き換えの方向(例・適法性の保証ではない) |
|---|---|---|
| 「糖尿病予防」「高血圧を防ぐ」「花粉症が治る」「アトピー予防」 | 疾病の治療・予防=医薬品的効能。区分を問わず表示できない(薬機法) | 効能に触れず、含有成分や配合量を客観的に記載する(例:「〇〇を1粒あたり△mg配合」) |
| 「脂肪燃焼」「飲むだけで痩せる」「デトックスで排出」 | 身体機能の増強や体外排出をうたうダイエット表現は誇大・医薬品的とされやすい | 効果を断定せず、生活提案に置き換える(例:「食生活が気になる方の毎日に」) |
| 「美白」「シミ・シワが消える」「肌の弾力アップ」 | 身体の美化に資する効果は健康保持増進効果等に含まれ、誇大・医薬品的の対象になりうる | 事実の記載にとどめる(例:「ビタミンC〇mg配合」)。効果自体は標ぼうしない |
| 「免疫力アップ」「血液サラサラ」「めぐりを改善」 | 身体機能の増強を主たる目的とする表現に当たりうる | 機能性表示食品であれば、届け出た機能の文言のみを用いる |
機能性表示食品であれば、「本品には〇〇が含まれ、△△の機能があることが報告されています」といった、届け出た範囲の表現が使える。一方でいわゆる健康食品は、成分・配合量・味・使い方などの事実の記載が中心となり、効果効能の訴求は原則できない。
書き換えで留意すべきは、表示が問題になるかどうかは個々の文言だけで決まらない点である。写真、体験談、前後の文章を含む表示全体の印象から、健康保持増進効果があると誤認させるかで判断される。「〇〇をサポート」「〇〇を助ける」といった婉曲表現も、直接の効能標ぼうを避ける狙いで多用されるが、周辺の文脈次第で医薬品的効能や誇大表示と受け取られうる。安全とされる定型句が確立しているわけではなく、境界の判断は最終的に製品区分と表示全体に依存する。本記事は法令・公表資料にもとづく整理であり、個別表示の適法性は、景表法・健康増進法・薬機法の専門家や当局への確認が前提となる。
翻訳で表現やニュアンスが変わる問題には注意が必要
越境ECでは、日本語では抑えた表現が、翻訳の過程で強い効能表現に変わってしまうという問題が起きやすい。
一部の例を挙げれば、日本語の「めぐりを整える」を「improves blood circulation」や「若々しさを保つ」を「anti-aging」といった翻訳を付けてしまうことは起こりがちだ。また、日本語で、「スッキリ」を「cleanse」を翻訳したりと、原文にはなかった医薬品的・断定的なニュアンスが加わる。判断の対象になるのは、各言語で実際に表示されている文言である。原文が穏当でも、訳文が線を越えれば、その訳文が評価される。例えば「毎日の健康を気づかう方に」は、英語で「for your daily wellness」であれば原文の水準を保つが、「to stay healthy and disease-free」と訳せば疾病予防の含意が加わる。訳語の一語が区分の線を越えることがある。
対策として、翻訳コピーを日本語へ逆翻訳して意味の強まりを点検する運用が有効になる。多言語のレビューやインフルエンサー投稿を引用する場合も同様である。加えて、販売先の国・地域には独自の規制がある。健康強調表示(ヘルスクレーム)や広告表示のルールは市場ごとに異なるため、日本語版が国内基準を満たしていても、各市場版はそれぞれの基準で確認する必要がある。なお、海外の消費者に向けた多言語ページに国内法がどこまで及ぶかは、今回の公表では示されていない。
モール・広告・自社EC・アフィリエイトを横断で点検する
監視は媒体を問わず、検索でヒットするページを対象とするため、点検も横断的に行う必要がある。自社ECの商品ページと商品名、検索キーワードに連動するランディングページ、集客用のSEO記事、広告見出し、各言語版、そしてモール出店ページが、いずれも対象になりうる。モールに出店している場合は運営事業者にも協力が要請されるため、自社の表現が運営者側の削除・修正の対象となることも想定される。
第三者による表示も自社の責任範囲に入りうる。2023年10月に施行されたステルスマーケティング規制により、広告主の依頼にもとづく第三者の表示は、広告であることを明示しなければならない。アフィリエイターやインフルエンサーが誇大な効能を書けば、広告主が景品表示法上の責任を問われうる。体験談や口コミを効果の根拠として使う場合も、客観性が求められる点は自社表示と変わらない。
改善指導は最初の段階にすぎない。健康増進法は、指導に応じない事業者に対し、勧告、さらに命令へと進む枠組みを定めている。消費者庁は、健康食品等の広告その他の表示に対する継続的な監視を実施し、法に基づく適切な措置を講じるとしている。




