
特商法見直しへ、消費者庁が中間取りまとめ―海外EC執行も論点
消費者庁は10日、「デジタル取引・特定商取引法等検討会」の中間取りまとめを公表した。不意打ち性の高いチャット勧誘に対する規律や、消費者の判断を誘導する広告・UIへの対応、契約条件を記録した電子書面の交付などを提言した。海外事業者への執行では、プラットフォームや決済事業者との連携も論点となった。法改正の時期や内容は決まっていないものの、今回示された規律の方向性は、越境EC事業者にもかかわってくる。
チャット勧誘に電話勧誘販売並みの規律
同中間取りまとめは、SNSのダイレクトメッセージなどを通じた個別の勧誘について、電話勧誘販売と共通する不意打ち性があると整理した。
事業者側からチャットを開始する場合だけでなく、勧誘目的を知らせないまま、著しく有利な条件を提示して消費者から連絡させる手法も規律の対象にする方向を示した。SNSに加え、電子メールやSMS、ボイスメッセージ、オンラインセミナーなども対象になり得る。
具体的には、勧誘前に事業者名や勧誘者名、商品・サービスの種類、販売目的を告げる義務を設ける。不実告知や重要事項の不告知、威迫・困惑行為、拒否後の再勧誘も禁止する考えだ。
契約後は、書面を受け取った日から8日間のクーリングオフを認めるほか、不実告知による契約の取消権や過量販売の解除権を設けることも提言した。一方、返信できない一斉配信や、双方向のやり取りを想定しない単発のポップアップ表示は、それだけではチャット勧誘規制の対象にしないとしている。
規制対象を表示内容から画面設計へ拡大
広告や購入画面については、消費者の判断を歪める「ダークパターン」への包括的な規律を検討する。
対象として想定するのは、支払総額や数量、契約期間を正確かつ容易に把握できない表示、虚偽の口コミ・在庫情報・タイムセール、操作の反復や威迫的な文言によって申込みを迫るUIなどだ。広告であることを判別しにくい表示についても、禁止または広告である旨の明示を求める方向を示した。具体的な対象や判断基準は、下位法令やガイドラインで明確化する。
最終確認画面では、支払総額の表示や、重要な取引条件を複数箇所に分散させないことを求める。注文確定後に別プランへ誘導するアップセルでは、変更前後の契約内容を対照できる表示を義務付ける方針だ。
注文完了後には、契約条件を記載した電子書面などを遅滞なくメール等で交付することも提言した。最終確認画面と内容を一致させ、後から改変されない形で保存できる方法を想定する。
プラットフォームへの広告削除要請を法定化
違法な誇大広告への対応では、消費者庁などがプラットフォーム事業者に広告やアカウントの削除を要請できる仕組みを法定化する案を示した。
対象はECモールに限らず、広告やSNSのプラットフォームも含む。ただし、要請できるのは、販売業者に特定商取引法上の行政処分を行い、処分対象となった広告が引き続き掲載されている場合を想定する。要請に応じたプラットフォームについては、販売業者に対する損害賠償責任を免除する。
このほか、消費者が販売業者と連絡できない問題に対し、プラットフォームと違反情報を共有し、連絡先の修正や広告削除を依頼する連携強化も求めた。
海外事業者への執行、決済事業者との連携も浮上
海外事業者が日本の消費者向けに販売する場合、特定商取引法などが適用され得る。一方、事業者の所在確認や行政処分の送達が難しく、違反があっても執行の実効性を確保しにくい問題がある。
中間取りまとめは、公示送達制度の活用、不審な事業者名やサイト名の公表、EC・広告・SNSプラットフォームとの協力を対応策として挙げた。クレジットカード会社や決済代行業者との連携による資金遮断、支払いの留保、返金の確保も検討会で指摘された。
海外プラットフォームに国内代理人の設置を義務付ける案も出た。ただし、決済事業者との連携や国内代理人義務は、報告書の脚注に記録された委員の指摘であり、中間取りまとめが正式な制度方針として提言したものではない。海外事業者への対応は同資料25~26ページ
今回の整理は、日本の消費者を対象とする取引が中心である。日本から海外の消費者だけに販売する事業者へ、新たな国内義務が直ちに生じるものではない。ただ、日本向け販売も行う越境EC事業者や海外出店者を受け入れるモール、決済・広告事業者には、販売導線や契約確認メール、チャット対応、出店者情報の管理体制を見直す契機となる。
消費者庁は今後、事業者の取引実務や関連法制との整合性を検討し、必要な制度整備を進める。法案の内容や提出時期、規制対象、施行日は未定であり、今後の下位法令やガイドラインの議論を確認する必要がある。
The Consumer Affairs Agency of Japan published interim guidelines addressing chat solicitations, misleading advertisements, and electronic documentation for consumer transactions. The proposed regulations aim to apply similar standards to chat marketing as those for phone solicitations, while also expanding controls on deceptive UI practices. Furthermore, enhanced collaboration with overseas businesses and payment service providers is suggested to ensure compliance with Japanese consumer protection laws.




